かわやの

かわやの

hanacoと名乗ってるのでこんなブログタイトルにしてみました。タイトルと名前を続けて読んでみましょう。

 

交差する僕ら

 天野邸が売りに出されてから、6年。
 天野真琴が夜の歓楽街で働いているという話を、風の噂で聞いた。
 居ても立っても居られなくなった僕は、その繁華街を仕切っているというヤクザの一人と知り合うまでに至っていた。

「お前のいう娘がどの店で働いてるかだと? んなもん、てめえで探せ」

 オープン前の薄暗いホストクラブの店内で、ヤツはそう言った。
 癖のある金髪の青年だった。聞けば僕より年下だという。もしかするとまだ少年の域を出ないかもしれない。

「自分で探せるならとっくにそうしてる。それが難しいから、こうしてアンタに頼んでるんだ」
「それが人に物を頼む態度かよ。この街のキャバクラだけでも何軒あると思ってんだ。お前にできないなら、俺にだって無理だ」

 店内には僕とこいつの二人以外、誰もいない。
 相手がヤクザだからといって、物怖じなんてしていられない。やっと掴んだ彼女の情報なのだ。なんとしてでも手繰り寄せたかった。
 僕はホールのソファに腰かけて、スーツのポケットに手を突っ込んだままふらふらと立ち歩いている相手を睨む。

「アンタはここの従業員なのか?」
「ああ、ボーイの方だけど。問題があった時に怖いお兄さんを呼ぶ係だよ」
「"怖いお兄さん"は、アンタだろ」
「俺なんか下っ端もいいとこだよ。現にお前みたいなオトコ女にナメられてる。それにしてもお前、女にしちゃ背は高いし声だって低い……なぁ、ここでホストとして働く気はないか?」
「馬鹿言え」

 僕は女として見られたくないだけで、男に扮して他人を騙す趣味はない。

「お前さぁ、その真琴って女とどういう関係なワケ? やっぱりそっち系だったりすんの?」

 質問の内容があまりにも下らな過ぎて、否定する気さえ起こらなかった。
 こいつらはいつだってそうだ。誰彼の仲を知りたがり、すぐに色恋や下半身の話題に繋げたがる。
 僕と真琴を、そんなものと一緒にするな。僕らはそんなものから切り離された、やっと出会えた心で繋がれる【仲間】なんだ。

「否定しないんだ?」
「したところでアンタは勘繰るだろ」
「賢明アピール? いいよ、お前がどうしてもその娘を見付け出したいってんなら、俺が手引きしてやるよ」
「……本当か?」
「お前の見た目だったら上手くいくだろ。キャバクラに行って、女たちから直接話を聞いてこい」
「どういうことだ?」

 ヤツは一度バックヤードに引っ込むと、紙袋片手にホールへ戻ってきた。その紙袋を僕に手渡してくる。

「ボーイの振りをしろ。こっちの方が客として出向くより、多くの情報が得られるかもな?」

 渡された袋の中には、どこかの店のボーイのものと思われる制服が入っていた。黒いスラックスにベストまで見える。
 この時の僕は、驚愕の眼差しを相手に向けていたことだろう。

「いいから、いっぺん着替えてこい。奥の控え室、使っていいから」
「なんの真似だ……」
「真琴チャンに会いたくないの?」

 そう言われてしまうと返す言葉もない。仕方なく、控え室を借りることにした。

   *

 着替え終えた僕がホールに出ると、ヤツは大袈裟な手振りで拍手を送ってきた。どこまでも人の神経を逆撫でするのに長けた輩だ。

「思った通り、違和感ないじゃん。ネクタイちょっと曲がってるけど」
「うるさい。これで本当に上手くいくと思ってるのか」
「お前さぁ、手段を選べる立場なワケ? 嫌なら今すぐそれ脱いで、帰ってくれてもいいんだけど」
「……どこの店に行けばいいんだ?」
「それは今から手配する。なぁ、ほんとにウチで働く気はない? お前、今、喫茶店でバイトしてんだって? そんなとこのしょっぱい給料よりうんと稼げると思うけど」
「そんなことはどうでもいいから、アンタは店の手配をしろ!」

 僕がそう言った瞬間、相手の目付きがそれまでと一変した。

「"しろ"?」

 どす黒さを全身で感じ取れるぐらいの、恐ろしく低い声がヤツの喉から響いた。
 冷や汗が滲み出るほどの感覚に、僕は初めて、自分がしようとしていることの危うさを認識した。若かろうが、なんだろうが、こいつも裏社会の人間の一員に違いはないのだ。
 でも、後には引けない。

「……してくれ」

 言い直した僕の言葉にヤツは、唇の端を片方だけ吊り上げると再び奥へ引っ込んでいった。取り残された僕は、ぐったりとソファに座り込む。
 ――これでいいんだ。後悔する必要がどこにある? 真琴が辛い思いを続けることの方が、僕には耐えられない。
 だったら僕は、今度こそ自分を犠牲にしてでも――
 ふと、心配そうな目で僕を見る友人の顔が脳裏に過った。高校時代のクラスメート。今の僕を見たら、あいつならどう思うだろうか。

「きっと、怒るだろうな」

 それでも僕は、同じ痛みを抱える真琴が大事だった。
 何を抱えているのかもわからない、何も抱えていないかもしれない彼とは、比べ物にもならないぐらいに。


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1作目グッドエンドのアフターストーリーのつもり。まーた黒歴史を増やすのかい、アタシ。
みなさん1作目は遊ばなくてイイんで、トビウオ遊んで下さい。

この主人公書くの苦手なんだよね。私(作者)と性質が全然違うんだもの。
でも暗いところは似てるかもしれん。
 
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プロフィール

hanaco

Author:hanaco
滋賀在住。躁うつ気味。
趣味でノベルゲームつくってます!!作品はここについてにリンク張ってます。

何かを書き続けていたいです。

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