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かわやの

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書きたい時に書きたいことを書きたいだけ。ノベルゲーム置いてます。フリーの作詞家になることもあります。

 

前日カーニバル

 Sensitive……それは、敏感なこと。敏感とは、神経が尖っていること。神経質と同義かは、わからない。
 でも、人の機微に気付けるということだ。
 彼のそんなところは、とても優れていることだと思う。この感情はおくびにも出さないけれど。彼には気取られていないだろうか。

「そういえば、おくびの語源ってとても下品なのね」

 私は隣の彼に向けるともなく、そんな言葉を零した。
 屋上で、風に吹かれて髪とスカートの裾を揺らす私の隣にいる彼。高校生のくせに一丁前にソフトモヒカンなんかつくっている。以前、このせいで頭皮が気になると言っていたのを思い出す。ならやめればいいのに。

「藪から棒になんすか、先輩。また活字だらけのサイトで仕入れた小ネタですか?」

 彼――弘前健二は、うんざりしたような顔で私を見上げた。彼が見上げる格好になっているのは、彼だけが座っているからだ。
 一方の私は屋上の手摺りにもたれている。弘前の言う通り、スマホでネットを見てはいるけれど、仕入れた知識を早速ひけらかしている訳ではない。断じて。

「あなたはスマホで遊ばないの?」
「スマホで満足できる性質なら、先輩と一緒に過ごしたりしませんよ」
「そうね。でも正しくは、文字を読みたくないだけ。違う?」
「誰かさんみたいに、活字は趣味じゃないんで」
「じゃあ、別の遊びをしましょう。あなた男の子なんだから、外で遊ぶものくらい持ってるでしょ。フリスビーなんてどうかしら」
「なんでフリスビーなんすか。まぁ、家にならありますけど」
「なら話が早いわ。明日、ね。いいでしょ、私もやるから」

 私はスマホの画面から目を離すと、弘前を見下ろして満面の笑み(自分ではそう思っている)を浮かべた。
 彼は上目遣いのまましばらく固まっていたが、やがて盛大な溜め息を吐き出した。

「……わかりましたよ、持ってくりゃいいんでしょ」
「聞き分けのいい後輩は好きよ」

 私が褒めると、また一つ溜め息。まったく、何が気に入らないというのか。
 空を見上げれば、雲一つない抜けるような青色が広がっている。少しでも気を抜けば吸い込まれて、どこまでも落ちていきそうになる。

「依頼、入ったわ」

 今度は決して独り言なんかじゃなく、明確に伝えようという意識を込めて、ソフトモヒカンのてっぺんを見つめた。

「そっすか」
「多分、今頃は契約上のルールやらその他決まり事も相手に伝わってる筈。明日は寝過ぎに注意して」

 私がそう言うと、弘前はそこで不敵な笑みを浮かべた。そういえば、今日、彼の笑顔を見るのは初めてな気がする。

「俺を誰だと思ってんすか。いつどんなところでも寝られるのが俺だって、先輩ならよく知ってんでしょ」
「のび太くんみたいね」
「やめて下さい」

 他愛のない会話による応酬。それだけでも時間は過ぎていく。
 弘前と過ごす穏やかな時間は、なるほど悪くないなと私は思っている。Sensitiveな彼になら、この好意的な感情は読み取れるだろうか。
 ――それはないでしょうね。夢でも盗み見られない限り。
 さて、明日は少しだけ疲れることになりそうだ。
 どうか強い風が吹かないようにと祈って、私は明日のフリスビーに備えることにした。


---

後日のお話はこちらで読めます。


伏田のアニキ、すんません。
勝手に前日談を書いてしまいやした。

問題ありましたら遠慮なくお申し付け下さい。
これを書いてる時、私はとても有意義な時間を過ごせたように思います。


あでゅー。
 
 
Comments
 
 す、すげぇもんを見てしまったぁ……!!
 拙者、ときめいたでござる。ほんとうに。
 よくこの短時間で広田先輩のキャラをつかんで鮮やかに描写し、かつオチに弘前の特技の設定を持ってきて先輩目線で回収しましたね!?
 お見事です。
 トレス能力の高さ、リズム感のある叙述、応用力とシュートの決定力などが見えましたよ……恐ろしい子……。

 今まで僕は、友人と一緒に同人誌を書いたり、同じプロットで小説を書いて比較してみたり、テーマだけ決めて別な話を書いてみたり、色々な設定で「共作」という形を試したことがあるのですが、こんなにアクロバティックな共作は始めてです。感謝いたします。文芸の新しい面を(もちろん楽しい面!)発見させていただきました。
 いやーすげぇいいなあ文芸友達……(ひとりごとです)
 好きな作家の新刊が出たときくらい興奮しましたよ。
 謝ることは全然ないです。ほんとうに楽しかった。

 大変ありがとうございました!

 伏田でございました。
伏田さん 
ああっ、よかったぁ…!
叱るならどうか、どうぞお叱り下さい!!って気持ちで公開したので、喜んで貰えたみたいでとてもとても嬉しいです!
めっちゃ褒めて貰えた…すげー…(伏田さんが)

勝手に視点を変えといてこんなこと言うのもアレですが、
広田先輩が実は裏のある性格じゃなくて、ほんとに安心しました。笑

私からすれば、同じ設定をそれぞれで書いてみるっていうのは斬新だったりします。
きっとテーマ次第ではまーったく違う作品が出来上がるんでしょうねぇ…
共作といえば世の中にはリレー小説なんてものもあるみたいですし、ひとりぼっちも悪くないけど、誰かと文字で遊ぶことに憧れたりします。
伏田さんさえよければ、ぜひ共作仲間になって下さい!

ではでは、反応して下さってありがとうございます!!
ああ…よかったぁ(2回目)。

 
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